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膠おやじの記憶を記録する

投稿日:2014年7月26日

2010年11月から12月にかけて三千本膠が作られなくなるとの情報が飛び交い、日本画のニッチな業界ですがちょっとした騒ぎになりました。その時に書き込まれた「あなたは三千本派ですか?僕は鹿派です。」の一文が今も印象深く記憶に残っています。膠作りの研究を始めた頃から今日まで、その途上で開設した弊社の歩みと重なり、膠の情報発信と牛皮和膠の流通に取り組んできました。さて、開設4年目に至りHPが古びてきましたのでリニューアルし、ブログを始めることになりました。題して「膠おやじの記憶を記録する」です。よろしくお願いいたします。

第1話 原料作り

牛皮和膠の製造研究に取り組み始めた時から、薬品類を一切使用しない原料と製法の膠作りを目指し、このことだけはぶれずに成し遂げられたと思います。膠について教えて下さったある会長のお言葉、「膠はなあ・・何も足さない、何も引かない原始的な膠が一番いいんや」。これが膠作りの原点と思ってきました。黒毛和牛1頭の剥いだ毛付皮を4分割しタンクで一昼夜ぐつぐつと水煮したのが私たちの膠作りの始まり。膠にならないラーメンスープでした。実際に未処理の生皮を煮てみて、毛と皮膚と脂肪を除去しなければ、皮から膠を抽出するのは難しいことが理解できました。

「長時間かけて皮を煮たので、ラーメンスープを固体にしたい。」膠工場の職人さんにお願いして、抽出液を凝固、乾燥させていただきました。これは、表面に油が滲んだ土気色の穴あきチーズのような塊でした。

皮を石灰漬せず脂肪を除去するにはどうすればいいのか?削り取ればいいのでは?そうか。このことが解るまで3年かかりました。

「牛皮膠の原料にする牛の種類はどうしようか?」安定して入手できる国産の牛が良いと考え、黒毛和牛の生皮を原料にすることにしました。頭と足を除いた一頭丸ごとの皮を使います。生皮から脂肪層などを除去した皮を4分割し、干し竿に掛けて、冬場に天日でおよそ3週間乾燥させます。干す前は乳白色の生皮が、日光に晒されて皮からポタリポタリと脂がしたたり落ちます。3週間経つと、透き通った黄褐色の乾燥皮が出来ました。